1999年4月1日から「管理工学科」が「経営システム工学科」に変わりました
経営システム工学科 教室主任
加藤 俊一
中央大学理工学部に管理工学科が設置されたのは1962年です。その後、教育研究内容の拡大にともない、1999年に経営システム工学科に名称変更しました。
経営システム工学は、製品の生産において、品質、原価、生産性の最適化を目的にして、人、機械、作業等の諸要素を管理するという学問で、産業革命以降、企業経営における生産部門の効率化の一役を担ってきました。しかし、今日ではこのような枠組みを打ち破って、ソフトウェアやサービスを含めた多様な商品をその対象とするとともに、企画・設計から販売までの企業の全部門に渡る活動を取り扱うようになりました。また、国際取引のグローバル化にともなって、一つの企業の活動だけでなく、複数の企業間の連携までを考えるようになりました。すなわち、広く経営システム全体に対して適用可能な科学的理論と実戦的技術を統合した学問に発展してきました。
「経営システム工学」を理解するためには、「経営」「システム」「工学」という3つのキーワードに分けて考えるとよいと思います。
企業や組織の目的はお金儲けではありません。その存在価値は、提供する製品・サービスを買ってくれる、利用してくれる顧客がいて始めて生まれます。「経営」とは、顧客がどのような製品・サービスを望んでいるかを適切に把握し、そのような製品・サービスを生み出すのに必要な技術革新、イノベーションを行うことです。
製品・サービスを実現するのには多くの技術・人が関わります。一つ一つの要素技術、一人一人がどんなにしっかりしていてもそれらがうまくかみあってなければ、多くの問題が発生します。全体を見渡して適切なマネジメントを実現することが必要です。「システム」的アプローチとは、目的・ねらいを明確にし、これを効果的・効率的に達成するために電気、機械、化学、情報などの要素技術、能力を持った一人一人を結び付け、その力を最大限に引き出すための方法論です。
最後のキーワードは「工学」です。これは一言で言えば実践を目的とする科学的アプローチといえます。簡単な問題なら経験や勘に頼って解決することもできますが、複雑になるとこのようなやりかたでは何度も試行錯誤を繰り返すことになります。データ・事実を計画的に収集する、適切な統計的方法を用いてその背後にある規則性を見いだす、得られた結果をもとにオペレーションズ・リサーチの手法を用いて最適化を行うこと、必要に応じて情報技術を縦横無尽に活用することが大切です。
現在の社会は、変化の激しさを増し、ますます複雑なものになってきています。自分の利益しか考えない、場当たりてきな、経験や勘に基づいた企業・組織の運営から脱却するために、「経営システム工学」が果たさなければならない役割はますます大きくなりつつあります。数多くの優秀な学生が「経営システム工学科」の門をたたき、より大きな変革を生み出す力になることを期待しています。